研究概要 |
1.腎移植を行ったレシピエントの尿中脱落細胞内からRNAを抽出し、各種ケモカインmRNAの発現についてRT-PCRによる検討を行った。対象とした腎移植患者の尿中脱落細胞ではRANTES,MCP-1,MCP-2,IP-10,IL-8,Mig,MIP-1α,MIP-1β,ENA-78,Eotaxin発現を検出することが可能であった。加えて、尿中脱落細胞のケモカイン遺伝子発現を移植腎生検により急性拒絶が確定した症例と急性拒絶がなかった症例の間で比較検討すると、急性拒絶が起きた症例では尿中脱落細胞内Mig、RANTES,MCP-1遺伝子発現が増加することが観察された。これらの遺伝子発現は、生検による診断確定や血液検査所見より早期に増加することが示唆されている。 2.腎血行動態を調整する重要な物質としてアンジオテンシンII以外にもEndothelin(ET)による血管収縮やNitric oxide(NO)による血管拡張が上げられ、Calcineurin inhibitor(CNI)であるCyclosporine(CsA)及びTacrolimus(TAC)は強力な免疫抑制効果と共に血管収縮作用を持つことが報告されている。今回、血管収縮物資に対して緩衝作用を持つNOの産生に対するCNIの影響について検討を小動物にて行い、CsAがNO産生を抑制することとTACはそれ単独ではNO産生に影響を与えないもののNO産生の低下した状態では血管収縮作用が増強されることが判明した。
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