研究概要 |
(1)神経内分泌変化は前立腺癌のホルモン依存性の喪失の1つの重要な機構と考えられるが,神経内分泌のマーカーであるクロモグラニンAの血清値を転移性前立腺癌患者で測定し,ホルモン療法の予後因子となることを報告した。また神経内分泌変化のもう1つのマーカーとしてNSEが前立腺癌のホルモン依存性の喪失に関与していることも示した。特に血清NSE値は転移性前立腺癌患者の非常によい予後因子となる可能性が示唆された。さらにクロモグラニンAやNSEの血清レベルと免疫組織学的染色法との相関を明らかにした。(2)転移性前立腺癌患者に対するホルモン療法の予後因子として,血清テストステロン値やアンドロゲン受容体のN末端領域に存在するCAGリピート数(転写活性に関与)が指標となることを報告した。つまり,血清テストステロン値が高いほど,CAGリピート数が少ないほど良好な予後が示唆された。(3)癌抑制遺伝子p53のホモログであるp73およびp51遺伝子の発現と構造異常について検討し,前立腺癌進行との関連について報告した。(4)転移性前立腺癌患者において,治療前血清テストステロン値とアンドロゲン受容体のCAGリピート数の組み合わせによって,ホルモン療法反応性を予想するノモグラムを作成した。現在,症例数を追加してvalidationを進めている。 これらの研究成果は,前立腺癌のホルモン抵抗性獲得の分子機構の解明に大きく貢献した。また転移性前立腺癌患者において,治療前血清テストステロン値とステロイド代謝関連遺伝子の遺伝子多型からホルモン療法の治療反応性を予測して,ホルモン療法の方法を選択する試みの基となるものであり,さらに発展させていく予定である。
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