研究概要 |
長期移植腎生着を可能とする免疫状態を明らかにする目的で腎移植患者のco-stimulatory signalについて以下の研究を行った。 1,長期移植腎生着患者67例、透析患者10例、健常人14例の末梢血リンパ球のco-stimulatory signalのマーカーCD11a,CD2,CD28を検討した。CD11a,CD2は移植腎生着患者、透析患者、健常人ともに変わらなかったが、CD28は透析患者、健常人に比べて移植腎生着患者で有意に低下していた。そして、CD28の低下はCD4陽性T細胞で著しいことが判明した。 2,長期移植腎生着患者にみられたCD28陰性CD4陽性T細胞の機能、特異性を明らかにする目的でマーカーCD25,CD69,V alpha 24,CTLA4の検索,長期移植腎生着患者とdonor, third partyとのMLC反応,RT-PCR, Southern blotting, ELISA法でT cell receptorのV beta鎖repertoire,及びINF-gammer,TGF-beta,IL-4,IL-10を検索した。CD28陰性CD4陽性T細胞にはCD25,CD69,V alpha 24,CITA-4は表されておらず、これまでにサプレッサーとして働く細胞と異なっていた。MLC反応からはドナー特異的抑制が観察された。T cell receptorのV beta鎖repertoireの分析では明らかな偏りがみられ、特異的な抗原を認識している可能性が示唆された。INF-gammer,TGF-betaの発現の亢進が、しかしIL-4,IL-10の発現は認められなかった。 3,腎移植患者74例の末梢血CD28陰性CD4陽性T細胞の出現頻度と移植腎予後のプロスペクテブな3年間にわたる検討からは慢性拒絶反応合併例でCD28陰性CD4陽性T細胞が少ない傾向が観察された。 以上の結果より、このCD28陰性CD4陽性T細胞が特定の抗原、すなわちdonor抗原からの持続的な刺激を受けて生じ、サプレッサーとして働くことよりdonor特異的免疫抑制を行っている可能性が示唆された。
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