研究概要 |
(1)MXRのアミノ酸配列をもとに15塩基の合成オリゴペプチドを作成,これを免疫原としてウサギ抗血清を調整した。MXRを発現しているdoxorubicin耐性ヒト乳癌細胞株(MCF-7 AdVp3000)とその親細胞株(MCF-7)についてイムノブロット法により解析したところ,MCF-7 AdVp3000において約70kDaのバンドが認められ,MXRを認識していると考えられた。免疫染色ではMCF-7 AdVp3000細胞において,主に細胞膜が染色された。MXRは細胞膜に存在して,何らかの輸送機構に関与していると考えられた。 (2)20例の腎細胞癌組織におけるMXRの発現をPCR法により調べた。発現レベルは低かったが,正常腎組織より発現が亢進しており,腎細胞癌における薬剤耐性への関与が示唆された。 (3)Flow cytometryによる解析で,MCF-7 AdVp3000細胞においてP-gpの基質であるrhodamine 123のATP依存性の細胞外排出を認めた。しかし,P-gp阻害剤であるPSC833はこの排出を阻害しなかった。また,MRPの基質であるcalceinの排出は認められなかった。MXRはP-gpやMRPとは異なる輸送スペクトルを有すると考えられた。 (4)MCF-7 AdVp3000細胞から調整した膜小胞はATP依存性にleukotrien C4(LTC4)を小胞内に取り込んだ。この取り込みはMXRの阻害剤と考えられているnovobiocinにより阻害された。MRPの基質であるestradiol-17-β-D-glucuronideの取り込みは認められず,また,GS-platinumはLTC4の取り込みを阻害しなかった。MXRはMRPやCDDP耐性細胞に発現するGS-Xポンプとは異なる基質特異性をもったGS-Xポンプである可能性が示唆された。
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