研究概要 |
正常ヒト近位尿細管細胞(RPTEC)および各腎細胞癌(RCW, OS2,14TKB)に対しての薬剤耐性因子(Pgp/MRP1/γGCS/V-ATPase/CRR9)の発現量および薬剤感受性について調べた。RPTECでの発現量と比較して、RCWではPgp,γGCS, CRR9が,OS2ではPgp, MRP1,CRR9が,14TKBではPgp, MRP1,CRR9が亢進していた。また、各細胞のGST活性とGST-_Π発現量は相関し、OS2>RPTEC>>RCW=14TKB=0であり、耐性因子の発現は多様であった。各細胞の薬剤耐性度は、CDDP, DXRに対して共にRCW>14TKB>OS2>RPTECとなり、いずれの薬剤に対してもRPTECの感受性が最も高く耐性因子の発現に依存し、特にPgpはDXRに対して、γGCSはCDDPに対して抵抗性を発揮したが、GSH-DXRは耐性因子の発現に無関係に強い殺細胞効果を発揮した。一方、GST-_Π sense/antisense cDNAを細胞に導入してGST-_Π発現量を調節すると、いずれの細胞に対しても、CDDPおよびDXRの薬剤抵抗性はGST-_Π発現量に相関したが、GSH-DXRではその効果変動は小さかった。また、GST_Π活性中心のTrp38およびCys47をHis、Serに置換し酵素活性を消失したmutant(GST/W38H、GST/C47S)の上記細胞への導入・発現は、薬剤感受性にほとんど変化を与えず、薬剤抵抗性の発揮にはGST活性が重要であった。以上より、GSH-DXRは種々の耐性因子の影響を受けることなく殺細胞効果を発揮し、しかもGST-_πを標的として非常に強い殺細胞効果を発揮できるので、腎細胞癌治療に有効な薬剤となりうることが判明した。
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