研究概要 |
[対象と方法]医学部動物実験委員会の承認を得,妊娠123日(満期145日)のSuffolk種ヒツジ胎仔(n=9)の頚動静脈と羊水腔にカテーテルを留置した.妊娠125日から対照群(n=2)では生食,G群(n=3)ではlenograstim 50μg/dayを5日間静注した.G+E群(n=4)ではlenograstim投与中の妊娠127日にendotoxin 20mgを羊水腔内に1回注入した.妊娠130日に胎仔を娩出し,日齢10に肺を灌流固定し病理検索に供した.動脈血多核好中球数(PMNc),Ventilatory Index (VI),Ventilatory Efficacy Index (VEI),動肺compliance(C dyn),肺の容積/重量比および単位容積あたりの肺胞表面積(surfacealveolar density)を比較した.連続量の比較にはKruskal-Wallis rank testを用い,多重比較はScheffe's testで行った.[成績]胎生期PMNcは,妊娠129日でG群ならびにG+E群において有意な増加が認められた(p<0.05).出生後PMNc, VI, VEI, C dynには3群間に有意な差は認められなかった.肺の容積/重量比では,G群ならびにG+E群において増加傾向が認められたが有意な差ではなかった.組織病理学的検索では,G+E群においてのみ肺胞管のびまん性気腫性変化(4/4例),気道系由来の多発性小嚢胞性病変および巣状無気肺(2/4例)が認められ,肺胞表面積もG+E群において有意な減少が認められた(p<0.01).付属器の組織病理学的検索では,G+E群の全例において壊死性卵膜炎ならびに壊死性臍帯炎が観察された[考察]G+E群では壊死性臍帯炎ならびに卵膜炎が誘導され,びまん性肺気腫(4/4例)と慢性肺疾患の典型例であるWilson-Mikity症候群にきわめて類似した肺病変(2/4例)が発現した.G+E群と同程度にPMNcが増加したG群では卵膜血管炎が認められたものの肺病変はなかったことから,G+E群で発現した肺病変はPMNcの増加とその活性化によって誘導されたものと結論された.
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