研究概要 |
良性型ヒトパピローマウイルス(HPV)はその病変である尖圭コンジローマの治癒とともに完全消失することが知られている。一方,子宮頸癌の原因である16,18,31,33,52b,および58型などの悪性型HPVは病変の切除後も完全消失しない場合があるとの報告が見られる。そこで我々は,子宮頸癌および異型上皮術前のHPVの型,術式,さらには存在様式と術後のHPVの陰性化との関連を検討した。 LEEP切除.子宮膣部円錐切除.単純および広汎子宮全摘術を施行した施行した159例の病変における術前.術後のHPVの存在とタイピングをHPVE6領域を増幅するnested PCRで行い比較した結果,悪性型HPVは159例中42例(26.4%)で陰性化していた。正確なタイピングが可能な16,18,33の3型のうちでは33型が最も高頻度に存続していた。31,52bおよび58型の悪性型HPVは病変や術式によらずほとんどの症例で存続感染しており,これらの型を除外,すなわち16.18.33方のみで検討すると102例中40例(39.2%)で陰性化が得られていた。浸潤癌で広汎性子宮全摘術を行った症例では70%と高率に陰性化していたが,子宮膣部円錐切除を施行した異型上皮では半数以上において術前と同型あるいは別の悪性型HPVの感染が持続していた。悪性型HPVの存続感染は異型上皮術後の再発リスクを増加させる可能性があるが,病変の完全摘出によりHPVの陰性化が期待できることが示唆された。
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