研究概要 |
近年の超音波断層法の急速な進歩によって脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia)が発見され,今日,脳性麻痺の重要な原因として注目されている.しかし,その病態、発症機序について十分に明らかにできていない.本症の病態を解明し,受傷前にその予知を行うことができれば,心身障害の発生の予防に極めて重要である.最近,前期破水によって脳室周囲白質軟化症が発症するリスクが高まることが報告され,その発症機構に炎症性サイトカインの関与が示唆される.そこで今回,炎症性サイトカインであるTNF-αが脳微小循環に与える影響について検討した.さらに脳細動脈収縮反応の変化に関するRhoキナーゼの関与について検討した. まず,アンジオテンシンII(ATII)(1μg/kg/min)投与6時間前にTNF-α(25μg/kg)を腹腔内投与して生理食塩水を投与した対照群と脳細動脈の収縮反応を比較検討した.さらに,ATII投与時にRhoキナーゼ阻害剤Y-27632(10^<-9>〜10^<-5>Mol)を投与し,ATIIに対する脳細動脈収縮反応に対する影響について検討した. TNF-αの前投与によってATII投与による脳細動脈の収縮率は23±14%と、コントロール群の7±5%に比較して強い収縮反応を認めた(p<0.05).この増強した収縮反応はY-27632投与によって用量依存性に抑制された(p<0.05). TNF-αの前投与によってATII投与による収縮反応の増強を認め,炎症性サイトカインによる脳微小循環への影響が明らかとなった.また,この反応はY-27632投与によって抑制されたことから,炎症性サイトカインによる脳細動脈収縮反応の増強にはRhoキナーゼの活性化が関与していることが示唆された.
|