研究概要 |
自己末梢血幹細胞移植:peripheral blood stem cell transplantation(以下PBSCT)を併用した化学療法を補うT細胞による細胞治療戦略作成のため,CD4陽性T細胞の抗原特異的活性化の研究を行った.特に、卵巣癌抗原特異的なT細胞の反応を検出する事を目的とした。 進行卵巣癌の手術時に得られた癌組織を抗原として,患者血清を用いて、ウエスタンブロット法により液性免疫反応の有無を解析した.その結果,複数の陽性(蛋白)バンドが認められ,卵巣癌抗原に対する免疫反応がある事が確認できたが,患者間で共通した反応は認められなかった. そこで、卵巣癌に特異的なCA125のアミノ酸配列を合成アナログペプチド48種類に置き換えて準備し,これらと患者末梢単核球を混合培養し,誘導されたT細胞の産生するサイトカイン(IL-4,IFN-γ)を解析した.尚,これに先立ち,化学療法後にもT細胞療法が可能かどうかを検証するため,患者T細胞の表面マーカー(CD4,CD8,CD45RA, CD45RO)を解析した. 化学療法後の患者の末梢単核球分画の解析では,メモリーT細胞が増加しており,化学療法後14日以降の患者末梢血T細胞は細胞療法に適していることが確かめられた. 合成ペプチドとIL-2を加えて,2日間培養すると,CD4陽性IL-4産生およびIFNγ産生T細胞の数が増加しており,CA125に対する抗原特異的なT細胞の反応が存在する事が確認できた.これらの結果から,PBSCTを併用した卵巣癌の化学療法後の細胞治療として,患者末梢単核球を用い,これをex vivoでCA125合成ペプチドにて刺激した後,生体に戻すという治療法が成り立つと考えられた.
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