研究概要 |
CCR-3は、好酸球、好塩基球、一部Th2型リンパ球に発現し、そのリガンドは主としてeotaxin, RANTESである。一方、CCR-4は、リンパ球のうちTh2型リンパ球に選択的に発現し、TARC、MDCをリガンドとしている。これまでの研究から、鼻腔洗浄液中に含まれる各種好酸球遊走因子のうち、eotaxinが最も好酸球数との強い相関を示すこと、各種好酸球遊走因子の好酸球の血管内皮細胞間隙通過に与える影響を検討すると、効果の強い順にeotaxin>MCP-4,RANTES>IL-5>PAF>LTB4,IL-16であること、また、抗CCR-3抗体を用いて好酸球を処理しておくと、鼻粘膜ホモジネートによって誘導される好酸球の血管内皮細胞間隙通過は約35%抑制されることが明らかとなった。一方、鼻アレルギー症例の鼻粘膜におけるTh2細胞の選択的浸潤に関与するTARCの主たる産生細胞は上皮細胞であり、その刺激因子としてはIL-4,IL-13,TNF-αであることを明らかにした。フローサイトメーターを用いた解析ではCCR-4陽性細胞はCD4,CD45RO陽性分画に最も多く存在しており、重症鼻アレルギー患者単核球では健常人と比較してCCR-4陽性率が亢進していた。また、スギ花粉症患者の単核球にけるCCR-4陽性率はスギ花粉飛散後期に増加していた。さらに末梢血単核球をCCR-4陽性細胞とCCR-4陰性細胞とに分離し、特異抗原で刺激したのち培養上清中各種サイトカインを測定すると、特異抗原刺激によるIL-5産生はCCR-4を除去することによりほぼ完全に抑制された。一方、IFN-γ産生量には明らかな変化がみられなかった。以上より、CCR-4やそのリガンドであるTARC、MDCを制御することにより従来とは異なる作用機作をもつ治療薬を開発できる可能性を示した。
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