研究概要 |
マクロファージの酸化還元状態を酸化型に調節することによる,実験的自己免疫ぶどう膜網膜炎(EAU)の発症抑制およびメカニズを解析する目的で以下の実験を行った. 牛網膜抽質抗原(IRBP)10μgを等量の完全フロインドアジュバント(CFA)と混和し,雌Lewisラット(10週齢)足蹠皮下に接種してEAUを惹起した。酸化型マクロファージを誘導する薬剤BSO(L-Buthionine-[S, R]-Sulfoximine)20mg/kgを抗原の免疫前12時間と免疫時,免疫後12時間,さらに免疫後7日まで連日腹腔内投与した。コントロールにはBSOの溶媒として用いたリン酸緩衝液RBSを使用した。免疫後15日目にラットを屠殺して脾臓を摘出,脾細胞を分離してIRBP 0,1,5,10μg/mlと共培養した。48時間後に培養上清を採取し,ELISA法にてサイトカイン(IFN-γ,IL-4)を測定した.72時間後に^3H-サイミジンを添加し,取込みを測定してリンパ球増殖反応を調べた.PBSを投与したコントロール群とBSO投与群ではIFN-γ産生量に差は認められなかった.またIL-4産生については両群ともに測定感度以下であった.リンパ球増殖反応はコントロール群に比べ,BSO投与群で有意に低下していた. BSO投与により抗原刺激によるリンパ球の増殖反応は抑制されていたが,Th2へのシフトは認められなかった.その後投与するBSOの濃度,投与期間を変えて実験を行ったが,EAUの抑制効果に有意差認められなかった.EAUを惹起する際に用いられるCFAは強力にマクロファージを還元型に誘導する薬剤であり,BSOの効果を不確実にしていることが考えられた.今後,マクロファージの酸化還元状態によるEAUの発症抑制を検討するには,アジュバントを用いないぶどう膜炎を自然発症するモデルの開発が必要と思われた.
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