研究分担者 |
山本 有平 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (70271674)
西平 順 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30189302)
杉原 平樹 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20002157)
横山 統一郎 北海道大学, 医学部附属病院, 医員
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研究概要 |
マクロファージ遊走阻止因子,MIFは活性化T細胞から産生されマクロファージの遊走を阻止する因子として発券された最初のサイトカインであるにも関わらす,今なおその機能に不明な点が多いタンパクである.これまでMIFが皮膚創傷部位で発現が上昇していることが明らかとした. そこで,MIFの機能を追及するため,transgenic(以下Tg)マウスを作成した.このマウスでは血清中のMIFが通常のマウスの5〜10倍の高濃度で存在すること,また心臓,肝臓,腎臓,膵臓および皮膚におけるMIFとそのmRNAが過剰発現していることを確認した.創傷治癒機構におけるMIFの役割を解析するため,新生Tgマウスより初代培養にて得た皮膚線維芽細胞を用い細胞増殖およびFas刺激によるapoptosis誘導試験を行い,正常皮膚の線維芽細胞を対象に検証した.その結果,細胞増殖には有意差を認めなかったが,TgではFas誘導apoptosisに対し耐性を示すことが分かった. 一方,ケロイドは過剰な創傷治癒反応により生じると考えられているが,これについて,MIFの発現および病態に果たす役割について検討した.その結果,ケロイドにおいては成熟瘢痕ならびに正常皮膚に比して非常に強いMIFおよびそのmRNAの発現を認めた.ケロイド由来線維芽細胞においても正常皮膚由来線維芽細胞の数倍という強いMIF mRNAの発現が認められた.そこで,siRNAを用い細胞内MIFの抑制を行い,このMIFがケロイドの病態に果たす役割を検討した結果,MIF knockdownにより細胞増殖とI型コラーゲンの発現が有意に抑制された.したがってケロイドにおいて強発現している細胞内MIFが細胞増殖亢進と細胞外基質過剰産生というケロイドの主要病態の形成に深く関与していることが明らかとなり,有効な治療のターゲットとなり得る可能性が期待される.
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