研究分担者 |
関堂 充 北海道大学, 医学部附属病院, 医員
井川 浩晴 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10232159)
杉原 平樹 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20002157)
崎山 幸雄 北海道大学, 大学院・医学研究科, 寄附講座・教員 (80133734)
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研究概要 |
唇顎口蓋裂は日本では500人に1人の割合で出生しているが,その発生原因はいまだ解明されていない。原因としては単一の遺伝子ではなく複数の遺伝子が関連しあい,さらに環境因子が加味していると考えられている。動物研究において,Lhx8遺伝子のノックアウトマウスを用いて口蓋裂の発生が見られた報告を基に,ヒトにおけるこの遺伝子の解析を行った。対象は症候群や他の先天異常を伴わない唇顎口蓋裂患者で,また健常人を比較対照群とした。検体には血液を用い,北海道大学医学研究科医の倫理委員会の承認を得て,インフォームドコンセントに基付き研究目的の同意を得た上で採血を行いDNAを回収しLhx8遺伝子解析を行った。平成13年度から14年度の2年間で患者103人,健常人87人を対象に解析を行い,エクソン2および8の領域にそれぞれ一塩基置換を認めた。しかし,これらの一塩基置換はいずれも1%以上の頻度でみられ,また患者および健常人で有意な差は認められなかったことよりSNPと判断した。以上の結果より,ヒトの唇顎口蓋裂の発症においてLhx8遺伝子との間に明らかな因果関係を同定することは出来なかった。 また,今回の研究では,唇顎口蓋裂を合併する疾患としてトリーチャーコリンズ症候群があり,この疾患の責任遺伝子であるTCOF1遺伝子の解析を行った。この疾患は常染色体優性遺伝によるものであり,これまで欧米を中心に100例を越えるTCOF1遺伝子の変異が報告されているが,本邦における報告例はなく,日本人におけるトリーチャーコリンズ症候群と本遺伝子との関係を明らかにする目的で解析を行った。その結果,我々の解析においてもTCOF1遺伝子に変異が確認され,本症の発生には欧米人同様TCOF1遺伝子が関与していることが確認された。
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