研究概要 |
陰圧創傷閉鎖法とは、組織欠損創面に持続的または間欠的陰圧を加え、肉芽および表皮形成促進をはかる治療法である。ウィスター系ラットを使用し、ラット背面に2.5X3.0cmの全層皮膚欠損創を作り、皮膚欠損創の面積の経時的変化に差を生じるかを測定した。各辺の長さと面積の測定は、1週間目と2週間目で行った。皮膚欠損創の面積は、2週間後においてもほぼ長方形を維持していたため、体軸縦方向と横方向の長さを乗じて計算した。ラット背面の全層皮膚欠損創にポリウレタンフォームを置きドレープで被い陰圧を全くかけなかったコントロール群と同じドレッシングを行い125,75,50mmHgの陰圧をかけた各陰圧群との4群に分けて比較検討することとした。 創部面積では、4群すべてが2週間目で有意な縮小を示した。群間比較では125,75,50mmHgの陰圧をかけた各陰圧群間には有意な差がないものの、陰圧を全くかけなかったコントロール群との間には1週間目よりすでに有意な差を認めた。これらのことより、創面に陰圧を加える陰圧創傷閉鎖法では、陰圧を125,75,50mmHgに設定しても創部縮小効果に差がなく同等な治療効果があることが分かった。 病理組織学的検討では、コントロール群の方が好中球などの炎症細胞の浸潤が著しく、炎症が激しい。それに対し、125,75,50mmHgの陰圧をかけた各陰圧群間には有意な差がないものの、浸潤は少なく炎症も少ない事が分かった。また、壊死組織もコントロール群には有意に多く認められた。また、コントロール群は125,75,50mmHgの陰圧をかけた各陰圧群に比較して、膠原線維の増殖が希薄であることが分かった。陰圧創傷閉鎖法群の滲出液中のサイトカインの変動としては、治療開始初期にはIL-6により、後期においてはIL-1により線維芽細胞・表皮細胞・血管内皮細胞の増殖が維持されているものと考えられた。
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