研究概要 |
口腔領域に発生したhyper keratosis(HK),squamous papilloma(SP),verrucous carcinoma(VC)の細胞動態とhuman papilloma virus(HPV)を調べるため、それぞれのパラフィン切片をhistone H3 mRNA in situ hybridization法とp53 immunohistochemical法の二重染色を行い、S期にある細胞とp53の発現異常について観察した。また、cyclin D1,cyclin B1についての染色を行い、その局在から病変と発現異常の関連について観察した。さらに、同じ症例について、DNAを抽出しbenign HPV(type 6,11)とmalignant type HPV(type16,18,31,33,35,52b,58)の検出をHPV consensus primerを用いたPCR法によって試みた。VCにおいてhistone H3 mRNAとp53 proteinの二重陽性細胞そしてcyclin D1およびcyclin B1の陽性率はHKやSPと比較し増加しており、その局在も広く分布した。さらに、cyclin B1では細胞質が染まるcytoplasmic dominantより核が染まるnuclear dominantの陽性率が増加した。HPVの検出についてVCとSPでは陽性症例が増加し、とくにmalignant HPVの陽性率はVCで増加した。しかも、Histone H3 mRNAとp53 proteinの陽性結果と相関が認められた。このことからHistone H3 mRNAとp53 proteinの二重陽性細胞は、p53遺伝子の変異によるものと考えられるが、HPVの感染の可能性も示唆された。
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