研究分担者 |
十川 紀夫 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (30236153)
山本 敏男 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30107776)
北山 滋雄 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80177873)
辻 岳人 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (90314682)
十川 千春 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (10253022)
中野 誠 岡山大学, 歯学部附属病院, 助手 (30335616)
小野寺 憲治 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40133988)
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研究概要 |
環境汚染物質の生体為害作用の解明は、現在最も重要な社会問題の一つである。ところで,新生児臍帯から複数の環境汚染物質が同時に検出されているという事実は,われわれが単独の化学物質のみに汚染しているのではないことを示している.しかし,これまでの研究は環境汚染物質単独の生体作用についてなされており,複合曝露を考慮した報告は非常に少ない。我々はこれまでに,重要な環境汚染物質の1つであるカドミウム(Cd)の解毒に関与すると考えられているメタロチオネイン(MT)の,肝臓での生成能に雌雄差があり,さらにこの性差には女性ホルモンが関与していることを明らかにしてきた。これは,女性ホルモンがCd毒性を増悪する可能性を示唆する興味深い結果であると考えられる。そこで本研究では,BPAのエストロゲン作用に着目し,BPAの生体作用の一部を明らかにすると共に環境汚染物質の複合曝露における生体への影響を解明することを目的に,Cd投与後のマウス肝臓におけるMT生成量および肝障害に対するBPAの影響を検討した。 その結果,BPA(100μg/kg)単独投与,Cd(0.5mg/kg)単独投与のみでは肝障害は認められなかったが,BPA前投与後にCdを投与した場合に肝障害が惹起され,肝障害に関し,両環境汚染物質の協同的作用が認められた。また,興味深いことに,Cd投与による肝MT生成はBPAの前投与によって著しく抑制されたことよりBPAとCd複合投与による肝毒性の増悪は,BPAのMT生成に対する抑制作用に起因すると考えられた。 さらに,環境汚染物質の複合暴露の影響を検討するためには、その物質に対する基礎的な抵抗性を明確にする必要があると考えられ,MT欠損マウスを用いて検討したところ,MT蛋白質が誘導されない状態では,雄よりも雌がCd毒性に抵抗性であること,雌マウスにおいてはMT以外のCd結合蛋白質量が雄性マウスよりも多いことを見出し,Cdの急性毒性に対する防御機構は雌雄で異なっている可能性を示唆した。
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