研究概要 |
cADPRを介する情報伝達系の分子機構とその生理的意義や病態の解明を目的とし1)cADPRのCa^<2+>動員作用発現機序,2)生合成/代謝系がいかにして受容体刺激に応答して調節されるか,3)cADPRの生理的役割についてイヌ顎下腺細胞(外分泌細胞),ヒト好中球(免疫担当細胞)などの非興奮性細胞およびウシ副腎クロマフィン細胞(神経細胞)興奮性細胞を用いて検索し,以下の結果を得た. 1.膜透過性とした細胞で,cADPRはリアノジン受容体(RyR)に作用しCa^<2+>動員作用を引き起こした.cADPRの作用発現にFKBP12.6を介した機構が含まれることを認め,その機序にFKBPをRyRから解離させることなく,FKBP12.6-RyR-calceneurin分子間相互作用に影響しRyRチャネルを活性化する可能性を示唆した. 2.cADPR生合成は各種刺激に応答して刺激後短時間で促進されることを見出した. 3.無傷細胞でcADPRはCa^<2+>動員作用に基づくCa^<2+>プールの枯渇を介してstore-operated Ca^<2+> entry(SOC)機構を活性化し,[Ca^<2+]i上昇の維持に寄与することを明らかにした. 4.cADPR阻害薬(8Br-cADPR),RyR阻害薬およびFK506処置はAChによる副腎CA遊離およびfMLPによる好中球遊走を50%以上抑制することを認め,cADPRによる持続した[Ca^<2+>]i上昇がこれら細胞応答に重要な役割を果たすことを示した. 以上の結果より,種々の刺激により産生されたcADPRがFKBPに作用し,RyRチャネルを活性化してCa^<2+>遊離を引き起し,さらに,このCa^<2+>動員作用に基づくCa^<2+>プールの枯渇により,SOCが活性化され,[Ca^<2+>]i上昇の維持に寄与しており,この様な[Ca^<2+>]i動態の修飾を介して細胞機能が促進的に調節されることが示唆された.
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