研究概要 |
骨芽細胞に存在するRNA結合タンパク質による翻訳制御が,骨芽細胞の分化に対してどのように機能するかについて明らかにする目的で本研究を行った.分化した骨芽細胞としてマウスMC3T3細胞、未分化間葉細胞としてマウスC3H10T1/2細胞を培養し,それらの細胞からtotal RNAを抽出した.また,種々のRNA binding domain (RBD)で保存されている塩基配列を利用して十数個のオリゴヌクレオチドプライマーを合成した.それらプライマーならびに骨芽細胞から抽出したRNAを用いてdegenerative RT-PCR法を用いDNAを増幅し,複数のcDNA断片が得られた.得られたcDNA断片をpGEM-Tベクターに挿入し,dideoxy法によって塩基配列を決定した.得られたcDNAは,既知のRNA結合タンパク質と同一であるもの(nucleolin)や構造が類似しているが未だ報告のない新規のRNA結合タンパク質(RNaseZ)と考えられるクローンがあった.得られたRNA結合タンパク質のcDNAをInteinタグを有する発現ベクターに組み込み,融合タンパクを大腸菌に発現させInteinのタンパク質スプライシング活性を利用して精製を行った.この組換えタンパクを抗原としてウサギを免疫し,ポリクローナル抗体を作製した.マウスオステオカルシン遺伝子のさまざまな長さの5'非翻訳領域ならびに3'非翻訳領域をプローブとしたゲルシフトアッセイを行ない,RNA/タンパク複合体に対する抗体の効果を検討した.抗nucleolin抗体によって,スーパーシフトが観察されRNAにこのタンパク質が相互作用していることが明らかになった.さらに,得られたRNA結合タンパク質cDNAを哺乳動物発現用ベクターに挿入させたプラスミドを,C3H10T1/2,W-20等の未分化間葉系細胞にトランスフェクトした.Stableに発現する細胞株を選択し,これらの細胞についてアルカリフォスファターゼ,オステオポンチン等の骨芽細胞の形質を調べたところ,オステオポンチンの発現上昇が見られた.以上の結果は,RNA結合タンパク質の骨芽細胞の分化との相関性に関する分子基盤を明確に見出したものであるといえる.
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