研究概要 |
Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)由来cytolethal distension toxin(Cdt)は,哺乳類細胞に対して細胞死とともに細胞周期G2期停止を誘導するが,その分子機構はまだ明らかにされていない。ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)および18型(HPV-18)は,肛門生殖器癌と一部の口腔咽頭癌の発症に深く関与する。これらのウイルスのE7は,網膜芽細胞腫関連遺伝子産物(Rb)に直接結合してRbの増殖抑制機能を阻害し,E6は,p53癌抑制蛋白質の分解・不活化を引き起こす。このようにHPV-16および18は,Rbおよびp53の不活化により,宿主細胞を癌化させる。 我々は,HPV-18関連癌細胞株であるHeLa細胞においてCdtが,p53発現増加とG2期停止および細胞死を誘導することを明かにした。また,野生型p53を有するマウスHS-72細胞にHPV-16E6/E7を発現させたクローンを樹立し,これらの細胞においてもCdtは,G2期停止と細胞死を引き起こすことを報告した。さらにHPV関連癌細胞におけるCdtによるp53集積機構解析のために,HPV関連癌細胞株(HeLa, SiHa)でRNAiを確立した。先ずRNAi活性が報告されているLamin A/C siRNAを用いてsiRNAの細胞内導入効率を最適化した。これによりHeLa細胞とSiHa細胞において90%以上の細胞にsiRNAが導入されるようになった。さらに,SiHa細胞では,HPV16E6およびE7に対するsiRNAを作成してこれらが,E6およびE7の発現を70%から80%抑制できることが判明した。以上から,これらの細胞で,極めて高いsiRNA細胞内導入効率とRNAiの達成が可能であることが明らかとなった。今後,RNAiを利用して,ATM, ATR, Chk1, Chk2,DNA-PKおよびARF等の発現を抑制することによりどの分子がp53の細胞内集積に重要であるかを明らかにする予定である。
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