研究概要 |
これまでの研究結果より 1.細胞外のATPによって神経細胞および衛星細胞の両者で[Ca^<2+>]_iの上昇が認められた.神経細胞ではP2Y受容体を介する細胞内カルシウム貯蔵場からのCa^<2+>の動員,衛星細胞ではP2X受容体を介する細胞外からのCa^<2+>流入が関与することがわかった. 2.神経細胞と衛星細胞でATP刺激後の[Ca^<2+>]_iの上昇に時間差が見られた.これは,衛星細胞でのすばやい[Ca^<2+>]_iの上昇は細胞外からのCa^<2+>流入であり,その後の神経細胞でのゆっくりとした[Ca^<2+>]_iの上昇は細胞内カルシウム貯蔵場からのCa^<2+>の動員によるためと考えられた. 3.神経周膜細胞がP2X受容体を有し,この受容体を介してCa^<2+>流入による[Ca^<2+>]_iの上昇反応が誘発されることが示唆された. 以上より,ATPが交感神経系の細胞の機能調節に関与している可能性が示唆された.さらに神経節を構成する神経細胞と衛星細胞のATP応答は独立しておきていることが明らかになった. 神経周膜は,形態的にbarrier機能の存在が報告されてきたが,今回の結果はATPに対して機能的にもbarrier機能が存在することを証明した.神経周膜細胞の持続した[Ca^<2+>]_iの上昇は,神経周膜細胞のintercellular communicationsを抑制し,結果としてbarrier機能の低下をもたらす可能性が示唆された.臨床的に神経周膜の透過性の変化は,neuropathiesやedemaと関係あることが報告されていることから,本研究において神経周膜細胞におけるATPが誘発する[Ca^<2+>]_iの増加を抑制したLidocaineの様な薬剤は,その膜の透過性が亢進するのを防ぐことで神経線維に対して保護作用があるのではないかと考えられた.
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