研究概要 |
本研究ではニフェジピン感受性(NIFr)および非感受性(NIFn)歯肉培養線維芽細胞を用いて,細胞周期と細胞周期制御因子の発現について検討した。細胞培養液中に10%血清を添加した場合,S期及びG2/M期への移行量はNIFrの方がNIFnに比べて多い傾向が見られたことから,NIFrとNIFnでは細胞周期上,異なった性質を有している可能性が示唆された。また,NIFnはNIFrに比較してp38MAPKの発現が多いことが認められ,アニソマイシンまたはIBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine)で両細胞を刺激すると,NIFnでATF-2のリン酸化率がNIFrより高いことが認められたことから,NIFnはより強く細胞周期における抑制がかかっており,逆にNIFrは細胞周期が進みやすく増殖しやすい状況になっていることが考えられた。さらに,細胞周期およびサイクリン,サイクリン依存性キナーゼ(CDK)のmRNA発現に対するニフェジピン(NIF)とbFGFの影響を検討したところ,NIFは両細胞中のサイクリンA,B,D,Eに直接的には変化を与えないことが認められた。しかしながら,bFGFを作用させた場合,NIFrはNIFnと比較して,G0/G1期細胞の有意な減少とS,G2/M期細胞の有意な増加が認められた。また,両細胞共にbFGFの刺激によって,サイクリンD1,E,A,B1,CDK2,1 mRNA発現の亢進が認められたが,すべてのmRNA発現においてNIFrはNIFnより高い発現を示した。従って,NIFrはNIFnに比較してbFGFなど血清内の細胞成長因子に対する感受性が高いということが示唆された。
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