研究概要 |
【目的】 本研究の目的は,心疾患の三大危険因子である高血圧、高脂血症、喫煙を中心に,心疾患と歯周病との関連を検討することである. 【方法】 当大学関連病院の循環器科に来院した患者で本研究の主旨を説明し同意を得た患者に対して以下の項目を診査し,データは個々の対象者が特定できないように番号に置き換えて処理した. 1.心疾患に関する診査:年齢,性別,既往歴,家族歴,喫煙習慣,生活習慣,血圧(SBP,DBP,MBP,PP),脈波伝搬速度(PWV:動脈硬化指標),血液検査(TCH,HDL,LDL,TG,BUN,UA,Cr,FBS,HbA1c),肥満度 2.歯周病に関する診査:ポケット深さ,BOP,GI,PI,舌苔,口臭. 3.細菌検査(唾液,縁下プラーク) 【結果】 高血圧症のみ有する患者(心疾患リスク群:R群)と高脂血症あるいは喫煙を有する患者(心疾患ハイリスク群:HR群)に群分けして検討した. 1.HR群の高脂血症合併患者(10名)とR群(15名)との間にはいずれの診査項目においても有意な差は認められなかった. 2.HR群の喫煙患者(32名)はR群(39名)に比較して,BOPは危険率5%で,GIは危険率1%で有意に高かった.これより,心疾患と歯周病との間に関連があることが示唆された.しかし,心疾患の原因となる動脈硬化(指標値PWV)と歯周病態との間には明瞭な関係は認められなかった. 細菌検査では,歯周病原性菌の代表であるPorphyrommonas gingivalis(P.g)菌は,唾液71試料および縁下プラーク71試料の計142試料いずれからも培養法では検出されなかった.一方,唾液サンプル10例についてリアルタイム定量PCR法で検討した結果,9例にP.g菌が検出された. 今後,リアルタイム定量PCR法について定量法の確立を図ると共に,培養法とPCRとの対応をとり,歯周病原性菌と心疾患との関連性について詳細なる検討が必要であると思われた.
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