研究概要 |
本研究では,まず電顕用水溶性樹脂に包埋した象牙質齲蝕病巣深部から抽出した細菌のDNAの塩基配列を決定しホモロジー検索を行った結果,34種の菌が検出され,歯冠部齲蝕からは1試料あたり平均4.8菌種が,また歯根部齲蝕1試料からは平均3.9菌種が検出された。一方,深在性齲蝕を有する歯の炎症歯髄組織中の浸潤細胞におけるToll-like receptor family分子(TLR)の発現頻度を,組織から抽出したmRNAを元にRT-PCRにて検索したところ,TLR-2はほぼ全症例で発現しており,次いでTLR-4およびTLR-9の順で発現頻度が低くなる傾向を示したが,TLR-9についても約半数の症例で発現が確認された。さらに炎症歯髄組織におけるTLR-2,4および9のmRNAレベルにおける発現様相をin situ hybridizationにて,またTLR-2および4の蛋白レベルにおける発現様相を酵素抗体法染色にて検索した結果,以下の所見を得た。すなわち,1.歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の多くでTLR-2のmRNAレベルでの発現が観察され,またTLR-4は炎症性細胞の一部において,弱いながら発現が認められた。一方,TLR-9の発現は歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の多くに強度の発現が認められた。2.光顕レベルでは,歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の一部でTLR-2の弱い発現が観察されたが,TLR-4の発現は認められなかった。3.電顕レベルにおいて,TLR2および4のいずれにおいても,形質細胞様細胞の細胞内での発現が認められた他,樹状細胞様細胞においてはTLR2蛋白の発現が,またマクロファージ様細胞においては,TLR4蛋白の発現が認められた。一方,リンパ球と思われる細胞の細胞膜あるいは細胞質内に両タンパクとも発現が認められなかった。
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