研究概要 |
患歯が難治化する原因は執拗な細菌感染の残存であるが、その誘因としては歯内治療の不備、患者の全身的状態、患歯根管および根尖の状況、根尖性疾患の病態などの臨床的要因に加えてEnterococcs faecalis, Candida albicans, Pseudomonas aeruginosaおよびStreptococcus oralisなどを中心とする歯内治療に抵抗性を示す細菌の存在が挙げられる。 難治性根尖性歯周炎症例の多くは亜急性症例であるが、その症状は様々である。 本研究では、難治性根尖性歯周炎症例の臨床症状発現にこれら治療抵抗性細菌の及ぼす影響を明かにする目的で、治療抵抗性細菌の病原酵素産生性を検討した。 E.faecalisは難治性根尖性歯周炎8症例、P.aeruginosaは4症例、またS.oralisは10症例の各治療時に採取し、保存した菌株から無作為に抽出したそれぞれ32株、19株と23株を実験に供した。標準株E.faecalis(ATCC19433)、P.aeruginosa(ATCC10145)とS.oralis(ATCC35039)を対照として用いた。 病原酵素産生の内DNase産生性はDNase試験用培地(Difco)で、hyaluronidase産生性とchondoroitin sulfatase産生性はSmithとWillet(1967)の方法に従い、collagenase産生性はYankeelov et al.(1977)とTakahashi et al.(1989)の方法に準じて試験した。Lecithinaseとlipase産生性試験にはLD-egg yolk agarを用いた。 その結果、S.oralisでは標準株(ATCC35039)、供試株ともに今回試験した病原酵素産生性をまったく示さなかった。 それに対し、E.faecalisがchondoroitin sulfatase産生性を、またP.aeruginosaがlecithinase産生性に加え、collagenase、hyaluronidaseとchondoroitin sulfatase等の弱い産生性を高い頻度で示したことから、これら細菌の病原酵素産生性が難治性根尖性歯周炎の執拗な臨床症状の発現に関与している可能性が示唆された。
|