研究概要 |
母語,即ち日本語に対する非母語,即ち外国語(英・米国語)の干渉のあり様を様々な角度から解明するため,視・聴覚刺激を用いて英語/r/・/l/音の識別訓練を行った日本語話者を対象に,日常臨床上に用いられている英語/r/・/l/・/s/・/t/などや日本語/ら/・/さ/・/た/などの構音動態を音の生成に直接関与し,舌の動きを表現している電気的パラトグラムを用いて検出し,多次元尺度構成法などを用いて解析した. その結果,構音と音,音韻知覚の関係が,言語のよってかつ個々人の音韻概念によって異なること,成人であっても学習・訓練によって改善・変化しうることが明らかになった.しかしそれらの学習・訓練効果を維持するためには,獲得後においてそれ相応の努力の必要性も明らかになった.また構音障害などのコミュニケーション上の価値を訓面する場合に構音と知覚の相互関係に配慮することが重要であり,そのためには音響分析や脳磁図は,電気パラトグラムと同様,有用な方法であることが明らかになった. これらの研究は子音の生成にあたって,舌と口蓋の両者を表現するパラトグラムが如何に重要な働きをしているかを再確認し,またパラトグラムがその音に生成機序を解明する非常に有効な手段であることも明確にした.さらに高齢者・中途障害者をも念頭に入れた新たなリハビリテーション法の確立の基礎資料を提供するものと考える.
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