研究概要 |
高齢者への適用が多い大型義歯には、摂食に際しての口唇・頬・舌などの周囲軟組織との機能的協調を考慮した形態を付与することが重要である。特に脳血管障害などによって嚥下障害を有する高齢者にとって、義歯は咀嚼しやすいだけでなくそれ以上に嚥下しやすいことが肝要となる。そこで本研究は以下のことを目的とした1.縞解析システムにより摂食から嚥下までの口腔および咽頭部のダイナミックな形状変化を時系列3次元データとして取得できる計測システムを構築し、点追跡型システムからのデータとあわせて同時解析できるシステムとする。2.上記システムにより摂食燕下における義歯の影響や燕下障害者における義歯の貢献度、口腔内・咽頭の状況と表層に現れる形状変化の相関を検索する。 (1)縞解析システムのシステムアップ:縞解析システムQuick Phaserは,テレビレート(60フレーム/秒)で連続して物体表面形状を測定し,データ出力することができる.すなわち,モアレの原理をすべてデジタル信号処理に置き換えた電子モアレ回路と時空間位相接続回路をハードウエア化したものである.顔面計測のための縞パターン投影による表面形状測定装置として最適化するため,時空間位相接続ボードを設置し、時間軸方向優先となっていた位相接続のプライオリティをxy方向優先の回路構成に変更し、計測の精度、安定性を向上させた. (2)縞解析システムの校正実験:解析システムの精度検証及び評価を精度検証用ピースによって行った。その結果平均の残差はx:0.28±0.45y:0.18±0.73z:-0.06±0.50(mm)であった。 (3)形状データファィルと点追跡データめ統合:点追跡システムElite Systemからの三次元座標データと縞解析システムからの形状データファイルを1フレームごとに同期させ,座標を統合するプログラムを制作した. (4)正常有歯顎者および義歯装着者における各種被験食品め摂食運動の計測を行い、嚥下障害者におけるVFデータから、口腔内・咽頭内の動きと表層の動きの関連を検索した. (5)正常有歯顎者における各種被験食品の計測データより,下顎運動と軟組織運動の時間的,空間的相関を検索し,咀嚼から燕下までの時系列モデルを確立した. (6)さらに義歯装着者において同様の実験を行い,義歯の変化によりどのように変化するかを解析した.
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