研究概要 |
本研究では,象牙質に近似した被削性を持つコンポジットレジンの開発を行った.ベースレジンにはBis-GMA系レジンを用い,フィラーにはシラン処理した平均粒径0.2μmと4.3μmの球状フィラー,平均粒径6.6μmの不定形ハイブリッドタイプフィラーを用いた.コンポジットレジンは、3種のフィラーで含有量をそれぞれ50,80mass%とした計6種を試作し,フィラー形状とフィラー含有量が被削性に及ぼす影響を調べた.また,試作レジンの各種物性値も検討した. その結果,平均粒径4.3μmの球状フィラーおよび平均粒径6.6μmの不定形フィラーを用いたコンポジットレジンにおいては,球状フィラーを用いたコンポジットレジンの方が不定形フィラーを用いたものに比べ大きな被削性を示した.また,フィラー含有量が大きいほど被削性が大きくなり機械的性質が向上したが,その傾向は不定形フィラーより球状フィラーの方が顕著であった.平均粒径0.2μmの小さな球状フィラーを用いたコンポジットレジンは、大きなフィラーを用いたコンポジットレジンに比べ小さな被削性を示した.フィラー含有量を大きくすると被削性が大きくなったが,機械的性質は向上しなかった. 象牙質の被削性は今回試作したどの試作レジンよりも小さかったが,試作コンポジットレジンの中では平均粒径0.2μmの小さな球状フィラーを50%含有させたコンポジットレジンが最も象牙質に近似していた.しかしこのレジンは機械的強さが小さく,臨床での使用には問題がある.被削性のみが必要とされる象牙質代替の模型材など,用途を限定すれば使用することは可能と思われる. 被削性が象牙質に近似し,支台築造などに応用可能な機械的性質を得るためには、ベースレジンの検討,シランカップリング剤の改良によるフィラーとベースレジンとの接着力の向上、異なる形状のフィラーを混合して使用するなど,更なる検討が必要と考えられる.
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