研究概要 |
本研究の目的は,脳卒中症における音声言語機能障害である麻痺性構音障害の主因である鼻咽腔閉鎖不全症の重症度を口蓋帆挙筋筋電図により評価できるかを検討し,さらにパラタルリフトの長期装着によって鼻咽腔閉鎖機能が受動的に変化し,さらにCPAP療法(鼻腔内陽圧負荷療法)等により運動療法の個別プログラムの構成が可能かを口蓋帆挙筋活動によって評価できるのらからを検討することにある.平成16年度において以下のことを明らかにした. 1.運動障害性構音障害を原因として発症した鼻咽腔閉鎖不全症例にパラタルリフトを作成し,装置装着下にCPAP療法を2ヶ月行った結果,2名の被験者において良好な結果が得られた. 2.これらの被験者においてCPAP療法開始前,療法中,療法後の口蓋帆挙筋筋電図を採取し,比較した. 3.健常者ならびに口蓋裂症例での口蓋帆挙筋活動との比較を行った結果,以下のことを得た. 1.blowing時の口腔内圧との相関性は保存されていた.2.最大筋活動は,器質的構音障害例と異なって,最大努力でのblowingではなくspeechにおいて示された.3.最大努力でのblowing時の筋活動とspeechでの筋活動を比較するとspeechでの筋活動が大きく,MSD例での筋活動の予備能の値には負の符号が付いた.一方,予備能の大きさはspeech sample全体の平均値として10%〜35%(13±5%)であり,B-VPIの方が絶対値は大きい傾向が伺え,また語音との対応性は,S-VPIでは認められなかったが,B-VPIでは保存されていた. 4.これらの特徴は,PLP装着下には健常者に近似するようになり,この所見は口蓋裂例でのPLPと同様であった. 5.PLP装着下にCPAP療法を行った症例では,装置撤去後も良好な筋活動が得られたが,症例の中には効果が減弱する例も見られた.
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