研究分担者 |
横山 雄一 北海道医療大学, 歯学部・歯科補綴学第1講座, 助手 (50295903)
越野 寿 北海道医療大学, 歯学部・歯科補綴学第1講座, 講師 (90186669)
平井 敏博 北海道医療大学, 歯学部・歯科補綴学第1講座, 教授 (80014273)
木花 八友 北海道医療大学, 歯学部・歯科補綴学第1講座, 助手 (20337033)
服部 真幸 北海道医療大学, 歯学部, 助手 (70316264)
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研究概要 |
平成13年度から14年度に、クレンチングが頭位ならびに姿勢に及ぼす影響を明らかにするために、以下の研究を行った。 まず、被験者として、正常有歯顎者8名を選択し、咬頭嵌合位、全歯列接触型スプリント装着時、片側(左側、右側)、臼歯部接触型スプリント装着時のそれぞれの咬合位で、5秒間のクレンチング(以下、VMCとする)を試行させ、VMC試行時および下顎安静時における頭位を磁気センサ式3次元空間計測装置によって、測定・記録した。また、左右側の閉口筋および胸鎖乳突筋の表面筋電図を記録し、筋電図積分値を算出し、分析を行った。なお、閉口筋および胸鎖乳突筋の筋活動の左右的バランスを表示する非対称性指数(以下AIとする)を算出した。その結果、クレンチング時には頚部が前屈すること、また、クレンチング時の咬合支持の左右的不均衡は閉口筋の筋活動の不均衡のみならず、頚部筋の筋活動の不均衡をもたらし、その結果、頚部の咬合支持側への側屈をもたらすことが明らかになった。このことは、咬合機能と頭位すなわち姿勢との密接な関連を示唆するものである。 次いで、正常有歯顎者5名を被験者として選択し,随意最大等尺性運動である両側の握力測定を行わせ,咬筋,側頭筋前部および胸鎖乳突筋の筋電図,下顎運動,頭位,重心動揺を同時に記録した.その結果、(1)被験者は身体運動時にクレンチングの発現する群(Clenching group : 3名)と発現しない群(Non-clenching group : 2名)に分類できた。(2)身体運動時の頭位については,Clenching groupでは前屈する傾向が認められたが、Non-clenching groupでは一定の頭位変化は認められなかった. さらに、正常有歯顎者6名を被験者として、閉眼状態で直立姿勢をとらせ,振り子を用いて右側腸骨稜側面に8.82Jの衝撃荷重を負荷し、頭部動揺,重心動揺,左右咬筋および左右胸鎖乳突筋の筋活動を測定した。なお、咬合条件は、下顎安静時(以下,Rest時),軽度の噛みしめ時,中等度の噛みしめ時,意識的最大噛みしめ時とした。なお、クレンチング強度の規定には,聴覚的フィードバックシステムを用いた.その結果、頭部動揺については,全てのクレンチング時の頚部側屈角最大振幅,頚部回旋角最大振幅および頭部動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).重心動揺については,全てのクレンンチング時の重心動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).筋活動量については,クレンチング強度が大きくなるにつれて,胸鎖乳突筋の筋活動量が有意に増大した(P<0.05). 以上の結果から,咬筋と側頭筋は胸鎖乳突筋と共同して,頭部の固定あるいは運動に関与していること、また、身体のバランスを乱すような外力の負荷に対して,クレンチングとこれに随伴する胸鎖乳突筋の筋活動が頭部の固定に関与し,頭部動揺を抑制するとともに,全身の重心動揺を抑制する役割を担っている可能性が示唆された.
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