研究概要 |
オッセオインテグレーテッドインプラントを利用した顎顔面補綴は、その有用性が数多く報告されている。しかし、放射線照射後の骨組織に対するインプラント埋入を行う場合、骨/チタン界面に対する放射線照射の影響を検討する必要がある。平成13年度は骨芽細胞が発現するストレスタンパク質(HSP)に注目し、骨芽細胞に影響を及ぼす線量を検討した結果、骨芽細胞のmRNAレベルでの放射線照射によるストレスタンパク質発現を確認し、骨芽細胞のHSP発現に影響を及ぼす線量が400mGyであることを解明した。平成14年度は、これをもとに放射線照射された骨芽細胞の材料上での動態、初期石灰化の過程を解明した。 すなわち、純チタンと表面処理を施したチタンを使用し、細胞はManiatopoulosらの方法に準じて採取した。Wister系ラットより大腿骨を摘出、坑生物質を含む培養液にて洗浄した。次に両骨端を切り取り注射針にて骨髄間質細胞を採取した。細胞は培養液α-MEMにて5日間培養した。その後、無菌状態でフラスコごと細胞に放射線を照射し2日間培養した。線量は40m,400m,4000m Gyとした。その後,継代培養し細胞を材料上に播種した。継代培養後3,5,7,14日目の各試料について,通法の固定,脱水,乾燥を行った。試料表面の細胞と石灰化物をカーボンテープにて部分的に剥離し,白金蒸着を行った。その後SEMによる界面の形態観察と電子プローブマイクロアナライザーによる元素分析を行った。さらにチタン表面での石灰化の程度を評価するために、一部試料の培養液にテトラサイクリンを加え、継代培養後7,14日目の試料に対して固定乾燥後、紫外線照射下で発光の程度を画像解析装置を用いて計測した。その結果、400mGy以下の放射線照射はin vitroにおいてチタン表面での細胞による初期石灰化に対して影響がなかった。また、4000mGyの照射では細胞の増殖は観察されるもののコントロール,40m,400mGy照射試料で観察されるような石灰化はおきないことが分かった。
|