研究概要 |
平成13年度 インプラントの咬合面材質と咬合接触状態の観察するための基礎データ 正常有歯顎者12名について咬合接触面積と咀嚼機能との関連について検討を行った.その結果,咬合接触面積は,咬頭嵌合位,側方咬合位の作業側および平衡側で強く咬合することにより増加し,その増加量は咬頭嵌合位,作業側,平衡側の順に大きかった.作業側では,軽く咬合した場合の咬合接触面積と強く咬合した場合の増加量との間に相関性がみられたのに対し,咬頭嵌合位と平衡側ではその傾向はなかった.また,咬合接触面積と咬合力による面積の増加量は,開口相時間,閉口相時間,サイクルタイムに影響しており,接触面積が大きい場合や咬合力による接触面積の増加量が大きいとそれらが長いという関係が認められたが,咀嚼リズムの安定性には大きく影響していなかった. 平成14年度以降 インプラント咬合面材質が顎機能に及ぼす影響 ITIインプラントを下顎臼歯部に装着した被験者について,インプラント上部構造の咬合面の材質を金属,陶材および硬質レジンと変化させて,咬合接触面積,ガム咀嚼時の咀嚼筋活動量,咀嚼リズムおよび咀嚼能率を測定した.測定時期は,上部構造装着直後,装着1か月後および2か月後のそれぞれにおいて行い,上部構造の材質による違いを測定項目ごとに検討を行った.すべてのデータを取得できた3名(2名片側,1名両側)の結果から,咬合接触面積と咀嚼能率は,直後に比べ1か月後,2か月後の順で咬合面の材質にかかわらず大きくなった.咀嚼筋活動量とサイクルタイムの変動係数は,測定時期と咬合面材質の違いによる変化があったが一定の傾向はなかった.サイクルタイムは,測定時期と咬合面材質の違いによる変化がなく,天然歯にみられた接触面積と時間との関係は認められなかった. 以上のことから,咬合面材質の違いによる顎機能への影響に明らかな差はみられなかった.
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