研究概要 |
歯科用金属と歯科用レジンとの接着性向上を目的として,新しい金属表面処理方法である電着の検討を行ってきた. 有効な処理条件を確定するために,処理時間および電着処理後の放置時間について検討した.リン酸基1個とメタクリレート基1個を有する接着性モノマーを使用し,18k金合金,金銀パラジウム合金,コバルトクロム合金およびチタンを処理時間や処理後からレジン接着までの放置時間を変化させて検討した.その結果,処理時間は,30秒から1分間が効果的だった.放置時間が変化しても,貴金属の接着強さの変化は小さかった.非貴金属では放置時間が長くなるに従って接着強さも大きくなった. 次に,新しい方法で歯科用金属に電着した場合の有効性について検討した.歯科用接着性モノマーとしては広く臨床応用されている4-META(4-methacryloxy ethyl trimellitate anhydride)を用た.処理溶液は,4-METAを水とアセトンの混合溶媒に分散させて調整した.これをセラミック繊維からなるシートに含浸させ,カーボンブロックと歯科用金属との間に介在させて通電することで,歯科用金属に4-METAを電着させた.その結果,歯科用チタンと歯科用レジンとの接着強さは10.7〜16.1MPaを示した.これらのことから,この方法は4-METAの電着が可能であり,歯科用金属とレジンとの接着強さを向上させるのに有効な手段であることが判明した. さらに,より臨床に近い条件として,サンドブラストしたチタン表面に,市販されている接着性レジンセメント液を電着し,これに硬質レジンを築盛して接着強さを測定した.また,被着金属を鋳造した場合およびしない場合の2種類を用いて,鋳造が電着に与える影響についても検討した. その結果,接着強さは鋳造しないチタンでは11.8〜19.8MPa,鋳造したチタンでは11.1〜18.8MPaであった.これらのことから,市販接着性レジンセメント液は電着に応用できることが判明した.
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