研究概要 |
コバルトクロム合金のレーザ溶接部に発生する割れやポロシティーなどの欠陥の原因を解明し,溶接部に割れを発生しないコバルトクロム合金を開発するとともに,溶接欠陥の発生を抑える溶接施工方法を検討した.その結果,以下のことが判明した. 歯科鋳造用コバルトクロム合金の基本構成元素であるコバルト,クロムおよびモリブデンだけの合金ではレーザ溶接部に割れは発生しなかった.したがって,コバルトクロム合金のレーザ溶接部の割れは,ケイ素および炭素が原因の可能性が高い.また,コバルトクロム合金を鋳造すると,埋没材成分中のリンが鋳造体に含有されるために,割れが発生しやすくなった. 歯科鋳造用コバルトクロム合金の溶融は粒界から生じた.レーザ溶接部の割れ発生が多い合金では,粒界の小さなスポットから溶融が開始し,徐々に拡大した.溶融が開始したスポットにはケイ素,酸素およびリンが濃化していた.割れ発生が少ない合金では粒界全体から溶融が開始し,マトリックスとの溶融境界も不明瞭であった. 矩形波のパルスYAGレーザの溶接においては,純チタンでは1.7mm以下であればポロシティーのない溶接が可能であったが,コバルトクロム合金では,ポロシティーのない深い溶込みを得ることは非常に困難であった. 歯科鋳造用コバルトクロム合金のレーザ溶接部に発生するポロシティーを波形制御によって防止することを検討したが,完全にポロシティーの発生を防止することは困難であった.今後,さらに検討する必要があった.これに対して,純チタンの場合は,矩形波の出力開始部の出力上昇速度を低下させたり,出力の減少速度を低下させることによって,完全に発生を防止はできないがポロシティーを減少させることが可能であった.
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