研究概要 |
実験には家兎を用いた.ウレタン,α-クロラロース,ガラミンを投与し,気管切開した後,人工呼吸下で実験を行った.まず,オトガイ神経,眼窩下神経に電気刺激を加え,循環動態の変化を検討した.刺激の様式は,強度1〜20V,頻度1〜50Hz,持続時間0.1〜0.75msの矩形波での10sの刺激とした. オトガイ神経,眼窩下神経とも頻度5Hz,強度5〜20V,持続時間0.5msの刺激時に最も血圧下降が顕著であり,この条件より低頻度および弱い刺激では,血圧下降は少なかった.一方,より高頻度および強い刺激では,血庄下降後に血圧が上昇する場合も出てきた.刺激に対する応答は,眼窩下神経の方がオトガイ神経よりも大きかった.血圧が下降する場合と上昇する場合とでは刺激開始から最大の変化となるまでの時間に差があり,刺激伝導経路が異なることが示唆された. ついで,三叉神経刺激と比較する目的で大動脈神経に電気刺激を加えた.刺激方法は頻度10〜50Hz,強度1〜10V,特続時間0.1〜0.75msの矩形波による10sの刺激とした.大動脈神経電気刺激による循環の抑制は,頻度25Hz以上の場合に明らかとなり,また心拍数の減少が三叉神経刺激より顕著であった.さらに,血庄の低下が最大となるまでに要する時間が,三叉神経刺激の際よりも長かった.以上より,大動脈神経刺激と三叉神経刺激はいずれも循環の抑制を惹起するが,刺激伝導路や迷走神経の関与の程度が異なり,循環応答に差異があるものと考えられた. さらに,眼窩下神経と大動脈神経を同時に電気刺激した.両神経の同時刺激により血圧および心拍数の低下は単独刺激による低下よりその程度は大きくなった.しかし,同時刺激による特異な反応は確認できず,三叉神経による循環抑制と圧受容体反射との関連は明らかにはならなかった.
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