研究概要 |
本研究の目的は口腔癌の術前癌化学療法の開始から手術までの間に腫瘍組織から穿刺吸引した腫瘍細胞や末梢血中の細胞からmRNAを抽出し,DNAを作製,抗癌剤による腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することが知られている蛋白のmRNAや末梢血中の細胞が発現している骨髄細胞の分化、増殖に関わる蛋白や免疫担当細胞のアポトーシスに関与する蛋白のmRNAの発現パターンや発現量をリアルタイムRT-PCR法を用いて解析し,癌化学療法の効果や副作用の程度をリアルタイムで評価するシステムを確立することである.平成13年度においてはin vitroの系でのシスプラチンや5-FU等の抗癌剤処理前後の末梢血単核球細胞からmRNAを抽出し,cDNAを調整、アポトーシス関連蛋白に対応したプライマーの選択およびRT-PCR法の技術的問題点の検討等を行なった.その結果、Fas, Bax, Caspase-2,3,8,9等のアポトーシス促進タンパクのmRNAの発現が増強した症例が認められた一方で,Bcl-2, Bcl-X_L, c-IAP2, XIAP等のアポトーシス抑制蛋白のmRNAの発現が増強した症例も認められた.以上より,in vitroの系で化学療法の前後の抹消血細胞におけるアポトーシス関連蛋白のmRNAの発現をRT-PCR法により検討を行ったところ,Fas介在性アポトーシスの経路を介する介さないに関わらず,抗癌剤処理が、末梢血細胞におけるアポトーシス関連蛋白のmRNA発現に影響を及ぼすことが明らかとなった.平成14年度は、癌化学療法の開始から手術に至る過程の口腔癌患者の腫瘍本体から、穿刺吸引により腫瘍細胞の採取を行い、さらに臨床検査用に採血された末梢血の血球成分より免疫担当細胞を調整し、アポトーシス関連蛋白あるいは細胞分化、増殖因子等のmRNAの発現量や発現パターンを検討中であり,さらに得られたデータと患者の臨床経過および手術時の切除標本における抗癌剤の病理組織学的効果との比較検討を試みているところである.
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