研究概要 |
我々はこれまでに、αGalactosylceramide(α-GalCer)処理した樹状細胞(DC)をマウスの皮下腫瘍内に投与することにより、皮下腫瘍に対して著明な抗腫瘍効果を発揮すること、そしてその抗腫瘍効果にはNKT細胞が必須であることなどを見い出している(橋元 亘,血液・腫瘍科,45(1):44-48,2002.)。さらにその抗腫瘍効果におけるIFN-γやIL-12の関与について検討した。その結果、α-GalCer処理DCの腫瘍内投与による抗腫瘍効果は、IFN-γに強く依存するがIL-12の関与は少ないことが示唆された(論文投稿中)。 そこで平成14年度は、ヒトの系におけるα-GalCerの抗腫瘍効果について検討した。ヒト末梢血リンパ球をα-GalCerにて刺激培養して、14日後の細胞表面マーカーについて調べたところ、CD3+CD161+(NKT)細胞が著明に増加することが明らかになった。さらに、その増加したリンパ球のPhenotypeについて詳細に検討したところ、CD3+CD161+CD56-Vα24TCR+であることが分かった(論文準備中)。 これはマウスの系において、Vα14NKT細胞がα-GalCerのリガンドになっているというこれまでの報告と一致しており、ヒトにおいてもα-GalCerがNKT細胞を活性化して腫瘍細胞に対して傷害活性を有することが十分に期待でき、今後はα-GalCerのヒト腫瘍細胞に対する細胞傷害活性の検討が必要となってくる。さらに、ヒト末梢血リンパ球をα-GalCerにて刺激培養した際に、IFN-γなどの抗腫瘍効果を有するサイトカインの産生を誘導するか否かを検討することにより、ヒト悪性腫瘍治療への臨床応用の可能性を検討していきたい。
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