研究概要 |
われわれは平成10年から口腔扁平苔癬患者にビスコクラウリン型アルカロイド(BA,セファランチン^<【○!R】>)を投与することにより,末梢血好中球のO_2^-産生能,各種サイトカインレベルの臨床経過に伴う変動を検討し,BA投与による臨床症状改善時には,末梢血好中球のO_2^-産生能の有意な抑制が認められ,口腔扁平苔癬の発症過程において末梢血好中球のO_2^-過剰産生が関与する可能性が示唆された.さらに病変局所におけるサイトカイン,O_2^-の影響を検討するため,当科を受診し,病理組織学的に口腔扁平苔癬と診断された30症例の生検材料を対象とし,各種サイトカイン(TNF-α,IFN-γ,IL-1β)ならびに抗酸化酵素スーパーオキシドジシムターゼ(Mn-SOD),グルタチオンペルオキシターゼ(GPX)の免疫染色を行い,臨床経過との関連を検討した. 1.TNF-α,IFN-γ,IL-1βの染色率はそれぞれ,56.7%,73.3%,43.3%であった. 2.TNF-α陰性症例でビスコクラウリン型アルカロイドの有効例が多く,統計学的に関連が認められた. 3.Mn-SOD, GPXの免疫染色ではそれぞれ53.3%,56.7%が陽性であった. 4.BA投与が有効であった症例ではSOD発現の見られない場合が多く,BA投与の有効性に影響を及ぼす因子としてSOD発現が有意な因子であった(ロジスティック回帰分析). 以上より,口腔扁平苔癬の発症過程,BAの作用機序においてサイトカイン,抗酸化酵素,活性酸素の関与の可能性が示唆された.
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