研究概要 |
申請者は癌の骨内の浸潤増殖は破骨細胞性骨吸収に引き続いて起こることに着目し,破骨細胞性骨吸収を標的とした治療法の基礎的検討を進めてきた.骨浸潤・骨破壊による破骨細胞性骨吸収におけるCTGFの関与を明らかにし,CTGFが分子標的となりうるか否かを検討するために,(1)CTGFの破骨細胞形成,破骨細胞性骨吸収過程における分子機構の解析を行い,CTGFの骨代謝における生物学的役割を明らかにする.(2)CTGF(hsc24)の遺伝子を導入した癌細胞をマウスに移植し,癌の産生するCTGFが骨吸収の促進因子となりうるかを動物モデルで検討する.(3)腫瘍の進展した骨微小環境では破骨細胞性骨吸収により骨からTGF-βなどの成長因子が多量に遊離していることが推察され,TGF-βは線維芽細胞のCTGF産生を促進することが報告されている.そこで骨微小環境に存在が予測される成長因子の癌細胞のCTGF発現への影響を検討した. (1)破骨細胞形成をCTGFアンチセンスオリゴヌクレチドは抑止したが,成熟破骨細胞の骨吸収活性は抑制しなかった.その機序としてCTGFの発現抑止により破骨細胞の支持細胞である骨髄間質細胞におけるODF(RANKL)の発現を抑制することが示唆された.(2)CTGF高発現癌細胞をヌードマウスに移植したが,高カルシウム血症は認められず,腫瘍の増殖の促進も見られなかった.(3)TGF-βにより癌細胞ならびに破骨細胞形成に関与する細胞群のCTGFの発現は促進され,癌の骨吸収により骨基質から骨微小環境下に遊離するTGF-βが局所においてパラクライン的にCTGFの産生を促進していることが示唆された.以上より,CTGFは液性因子として全身の骨代謝への影響は少ないが,癌の骨破壊の局所環境下での破骨細胞形成に重要な役割を果たすことが示唆され,癌の骨浸潤制御における分子標的となる可能性が考えられた.
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