研究概要 |
1.プロポフォールによる静脈内鎮静法の臨床効果を検討するため,研究内容に同意を得た健康成人ボランティア12名を対象として以下のような研究を行った。 (1)プロポフォールを6mg/kg/hで5分間,3mg/kg/hで85分間持続投与を行い,投与終了60分間安静にしてその間各種検査を行った。 (2)測定項目:鎮静度(BISモニター,鎮静スコア),平衡機能検査(定性,定量ともに開眼,閉眼で行った),血圧,脈拍数,呼吸数,動脈血酸素飽和度,プロポフォール血中濃度 (3)結果:鎮静度はBIS値と鎮静スコアおおむね相関し,プロポフォール投与30-90分で鎮静程度は深くなった。平衡機能検査では,定性,定量ともに投与中止10分後に機能が障害され,中止30分後に回復していた。血中濃度は投与60分,90分後には各々1.0,1.3μg/ml(平均値)で鎮静に適正な濃度であった。 (4)考察:BIS値が鎮静程度の評価に有効であった。またプロポフォール投与中止後,鎮静程度が回復しても平衡機能が回復しない時間があることが示された。 2.プロポフォールによる静脈内鎮静法にて歯科治療を受けた知的障害者症例10例を対象にBIS値と歯科治療内容および覚醒時間との関係を検討した。 (1)結果:歯科治療時間:38.5±12.0分、投与終了から覚醒まで:31.4±18.8分 プロポフォール総投与量:243.8±86.3mg、プロポフォール投与速度:6.5±2.2mg/kg/hrであった。 (2)BIS値:歯科治療中のBIS値の最頻値は35-55で、処置内容に関わらず同程度であった。歯科治療終了時および治療後のBIS値と覚醒時間に有意な相関関係が認められた。 (3)考察:歯科治療時のBIS値を高く保つことにより覚醒を速くできるのではないかと考えられた。 以上によりプロポフォールによる静脈内鎮静法にはBISモニターが有用であることが示唆された。
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