研究概要 |
発癌には染色体の不安定性が関与していると言われている。このことから、今回染色体構造異常を検討するために、近年開発されたspectral karyotyping法を用いて11種の口腔扁平上皮癌細胞(KM-1,KM-3,KM-5,Sa-3,H-1,TYS, BHY, HN, OSC30,OSC70,SAS)について分析を行った。この実験には分裂中期の染色体標本が必要であり、制作方法に工夫をした。すなわち、低張処理液0.075MKCLと0.9%クエン酸の濃度を3:1とし、染色体の展開に展開用機器のHANABIを用いて良好な標本が作製できた。染色体構造異常の解析にはSKY Viewコンピュータソフトを使用した。また、各細胞のDNA indexをフローサイトメトリーで解析した。 各細胞の染色体数にばらつきがみられ、KM-1の染色体が最も少なく(49-52本)、最も多い細胞はSa-3(98-100本)であった。DNA indexは1.35から1.64の間に分布していた。一般的に染色体数が多い細胞はDNA indexが大きい傾向にあったが、Sa-3は染色体数は98-100であったが、DNA indexは1.48と小さく、相関性はみられなかった。欠失などの染色体構造異常の部位数は16-33ヶ所で認められたが、染色体数やDNA indexとの相関性はみられなかった。今回の結果から、発癌の要因として染色体の構造異常や染色体の異常な分裂が関与していることが示唆された。また9個の細部で5番染色体短腕にisochromosomeが認められ、BACクローンを用いたFISHでこれを確認した。以前の実験からこの部位はDNAコピー数の異常に関連しているのではないかと推察された。
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