研究概要 |
平成13年度の研究でヒトIL-1レセプターアンタゴニスト(hIL-1ra)の発現遺伝子を構築した。これを培養細胞に遺伝子導入を行い、タンパクの発現を確認した。また、正常の顎関節と膝関節にエレクトロポレーション法でhIL-1raを遺伝子導入し、タンパクの発現を確認した。しかし、顎関節をはじめとする各関節の関節腔内を裏層する滑膜細胞や関節軟骨にプラスミドベクターが導入されるのであるが、それらは細胞数が少なく、発現量の面で不利な一面が考えられた。このことから、関節周囲の筋組織にプラスミドベクターをエレクトロポレーション法により導入し、関節炎に対する治療効果を向上させることをラットのアジュバンド関節炎を用いて検討した。すなわち、 1.ラット筋肉へのhIL-1raプラスミドベクターの導入:8週齢のオスLewis ratの前脛骨筋もしくは大腿二頭筋にDNA溶液を27Gの注射針を用いて注入し、直ちにエレクトロポレーションを行った。その結果、プラスミドベクターを導入した筋肉では、すべてhIL-1raを検出することができ、中でも50μgのhIL-1raを挿入したプラスミドベクターを導入した筋肉で最も強いhIL-1raの発現を認めた。 2.hIL-1raの発現期間:50μ9のhIL-1raプラスミドベクターを注入後、エレクトロポレーションを行い、1,3,5,7,14,21,28日目に同組織を採取した。hIL-1raの発現は、エレクトロポレーション後1日目から検出され、3日目でさらに発現は増強し、その後減弱しながらも28日後まで発現を確認できた。 3.上記のデータをもとに、ラットアジュバント関節炎へのエレクトロポレーションによるIL-1ra遺伝子導入の効果を検討しており、関節周囲筋をバイオリアクターとしたIL-1raの遺伝子導入療法の開発への可能性が示唆された。
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