研究概要 |
牛ラクトフェリンをペプシンで切断したフラグメントのうち高分子の分解産物(Lfn-p)を、口腔由来培養扁平上皮癌細胞(HSC-4,SAS)に用い、1)SAS細胞では細胞が障害、DNAの断片化がみられ、アポトーシスが誘導された。 2)アポトーシス抵抗性のHSC-4細胞では、Lfn-pによりPLD活性の上昇を観察した。 このPLD活性化は、a)MEK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤,PI3K阻害剤により抑制された。 b)PKC阻害剤によっては影響されなかった。 c)カルシウムキレート剤(EGTA)投与によりPLDの活性は抑制された。 3)MAP kinaseのp42/44ERKのリン酸化を両細胞で亢進させた。 一方、JNKは、アポトーシスが誘導されたSAS細胞でのみ活性化された。 4)アポトーシスが誘導されたSAS細胞について各種PKCの発現が、6時間のLfn-p処理によりPKCのうちε及びηサブタイプmRNA発現レベルが特異的に減少した。 以上により口腔由来培養扁平上皮癌細胞でのJNK活性化とPKC ε,ηの発現減少がLfn-pによるアポトーシスに関与すること、Lfn-pによるPLD活性化が細胞のサバイバルに関係すると考えられた。これらの内容の一部は、第55回日本口腔科学会および第42回大韓口腔顎顔面外科学会にて発表し現在論文を作成し投稿中である。 今後さらにラクトフェリンによる腫瘍細胞のアポトーシス誘導機構をJNKの活性化機構の解析を中心にすすめると共に、抵抗性の機構におけるPLDの役割を解析し耐性の克服を目指したい。
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