研究概要 |
顎顔面領域の形態異常による不正咬合の遺伝子治療の可能性を開くため,ラットで下顎頭と下顎骨の骨折モデルを作成し,この部の組織細胞にCTGFの遺伝子導入法の検討を行い,顎顔面の骨・軟骨の再生を図ることを目的に,以下の実験を行った.6週齢のWistar系ラットを下顎頸部から軟骨層にかけて骨折させ,12時間,1,3,5,7,10,14日後に,PFAで灌流固定した.下顎骨を摘出し,EDTAにて脱灰,パラフィン包埋した.5μmの矢状断及び水平断の薄切切片標本を作成し,CTGF, Collagen type I, II, III X, Cbfal, TGFβについてin situ hybridizationを行い,これらの骨折治癒過程における発現様相を検討した.CTGFの発現は肥大軟骨細胞での発現以外に,修復治癒部の増殖軟骨細胞においても発現が認められた.さらにCTGFの発現様相は経時的に変化しており,骨折の治癒過程において重要な役割を担っていることが明らかとなった. ラット下顎頭骨折モデルにおけるHVJ-リポゾーム法の至適条件を検索するため,以下の実験を行った.1.ラット骨髄から採取した未分化間葉細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入し,ルミノメーターにて計測,導入効率について検討した.2.ラット下顎頭を骨折させβ-ガラクトシダーゼ遺伝子をHVJ-リポソーム法にて遺伝子導入し,3日後にX-gal染色し,導入様相を検討した.脱灰後,薄切切片を作製し免疫染色により遺伝子の導入部位について詳細に検討した.これらの結果からHVJ-リポソーム法を用いた遺伝子導入が,下顎頭骨折モデルに応用可能であることが確認された. 本研究の結果からHVJリポソーム法を用いたCTGFの遺伝子導入が,下顎骨骨折の治癒促進に有効な方法となる可能性が示された.
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