研究概要 |
本研究では,歯周ポケット形成メカニズムを探る目的で,ヒト歯肉上皮細胞(HGE)およびヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の産生するMMP(MMP-2,MMP-9)の動向について調べた。各細胞の培養上清をサンプルとしてザイモグラフィーを行い,両MMP活性が検出できるかどうか調べた結果,HGEではMMP-9に相当するバンドが必ず認められ,MMP-2に相当するバンドも弱いながら確認できた。HGFではMMP-2に相当するバンドが必ず認められ,MMP-9に相当するバンドはTNFαで刺激した時のみ認められた。次いで非ペプチド系ヒドロキサム酸を骨格とした3種のMMP阻害剤(ONO-4817,ONO-MI1-514,ONO-MI1-570)について検索した。まず,これらの阻害剤が宿主細胞に対して安全であるのかどうかを調べるため細胞毒性試験を行った。その結果,すべての阻害剤は最終濃度50μMで両細胞のcell viabilityに影響せず,細胞増殖を阻害するような作用もまったく認められなかった。各阻害剤が歯肉細胞由来のMMP活性を効果的に阻害するのかどうかを調べた結果,すべての阻害剤共に,12.5μMで歯肉細胞が産生する両MMPの活性を強く阻害すること,阻害活性はONO-4817,ONO-MI1-514,ONO-MI1-570の順に強いこと,阻害作用は濃度依存性におこることが確認できた。さらに歯周ポケット形成時に歯肉細胞のMMPが果たす役割について明らかにするために,各阻害剤がin vitroにおける歯肉上皮細胞のmigrationにどのような影響を与えるのかを調べた。その結果,3種の阻害剤のうち,ONO-4817,ONO-MI1-514が,明らかにcell migrationを阻害することが明らかとなった。以上の結果,これらの阻害剤が歯周病の治療・予防薬として利用できる可能性が示唆された。
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