研究概要 |
本研究では,不良姿勢に伴う前方頭位が頸部の筋活動および下顎位に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 1.不良姿勢(前方頭位)が頭頸部の筋活動に及ぼす影響 対象:鹿児島大学歯学部男子学生41名の自然頭位での頸部頭蓋角と頸部傾斜角を計測し,前方頭位群5名と正常頭位群7名を抽出した. 方法:両群に自然頭位および強制前方頭位をとらせた時の胸鎖乳突筋,僧帽筋、胸骨舌骨筋,顎二腹筋,咬筋,側頭筋の活動量を筋電図で計測した. 結果:胸鎖乳突筋の活動量は自然頭位および強制前方頭位時とも前方頭位群では正常頭位群に比べ有意に大きかった.僧帽筋の活動量は強制前方頭位時に前方頭位群では正常頭位群に比べ有意に小さかった.胸骨舌骨筋,顎二腹筋,咬筋,側頭筋の活動量に両群で違いはなかった. 考察:前方頭位群では頭位を維持するのに胸鎖乳突筋の負担が大きいと考えられた.頸部の筋痛を伴う顎関節症では胸鎖乳突筋の症状が頻繁に認められる.前方頭位は頸部の筋痛を伴う顎関節症の要因の1つであることが示唆された. 2.頭位の変化が下顎位に及ぼす影響 対象と方法:対象は顎関節症経験や不正咬合,歯の欠損のない成人男性15名.椅座位で自然頭位,強制前方頭位,および左右へ60°回旋させた頭位をとらせ,各頭位での下顎骨の位置を6自山度顎運動解析装置(ナソヘキサグラフ)で解析した. 結果:前方頭位では下顎骨はわずかに回転しながら後右上方へ偏位した.頭部回旋では下顎骨は切歯点が非回旋側へ回転しながら回旋側の後方へ偏位した. 考察と結論:頭部の前方偏位や回旋に伴い,顔面頚部軟組織が変形し,下顎骨を回転しながら後退させたと考えられた.
|