研究概要 |
近年,健康づくりの一環として,国民のスポーツ活動への参加が増加している.これにともないスポーツ外傷に対する意識の向上が認められる.しかしながら,口腔領域の外傷の予防に対する意識は低く,マウスガード装着義務のあるスポーツにおいても市販のマウスガードを使用している事が多く,カスタムメイドマウスガードの必要性についての認識も高いものとは言えないのが現状である. そこで本研究においては,マウスガードの装着による咬合状態と重心動揺に対する影響を指標として市販マウスガードとカスタムメイドマウスガードについて比較検討を行った. 対象は,クラブに所属し,スポーツを行なっているマウスガードの装着経験のない成人20名を対象とした.被験者に対し,市販マウスガードおよびカスタムメイドマウスガードをそれぞれ3ヶ月間使用してもらい,使用直後,1ヵ月後,3ヵ月後の咬合状態および重心動揺の変化について測定を行った.市販マウスガードはマウスフォームドタイプを使い,カスタムメイドマウスガードはシート圧接法により作製し,前歯部で3mmの厚さを持たせたものを使用した. その結果,咬合状態については,市販マウスガードおよびカスタムメイドマウスガードともに咬合力,咬合接触面積の変化は認められなかった.重心動揺については,市販マウスガード装着時の1分間の総重心動揺距離は,使用1ヵ月後の測定で低い値を示していたが,有意な差は認められなかった.カスタムメイドマウスガード装着時では,市販マウスガードと同様の傾向がみられたが,使用直後と1ヵ月後の間に有意な差が認められた(P<0.05). 咬合状態については,市販マウスガード,カスタムメイドマウスガードともに影響は認められなかったが,重心動揺については市販,カスタム共に1ヶ月後の測定では減少がみられたが,3ヵ月後には使用直後とほぼ同じ値となり,同じような傾向が認められた.
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