研究概要 |
本研究の目的は,齲蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌(MS),乳歯齲蝕,フッ化物との関係を調べることである。 2歳から5歳までの保育園児を被験者とし,WHOの方法に従い口腔内診査を行い,同時にDentcult SM strip mutans testを用いて唾液中MSレベルを調査した。フッ化物洗口は5歳児を対象として行い,洗口開始前より唾液中のフッ素濃度の測定を行い,あわせて齲蝕抑制率とMSへの影響を調べた。 その結果,MSレベルは2歳から5歳までの各年齢グループでの比較では,2歳児は他の年齢グループと比較して有意に低く,3歳児グループでは5歳児グループと比べ有意に低い値を示した。齲蝕経験との関連性はすべての年齢グループにおいて高い相関係数が得られ,特にScore2.3は有意に高いdmftとdmfsを示した。また,1年後の齲蝕増加では各年齢で,Score3またはScore2.3において有意に高い増加数を示し,このことよりScore2および3の小児は齲蝕ハイリスク児に分類された。またMSのレベルは齲蝕発生の有効な予測因子であり,高い特異度,鋭敏度が得られた。 唾液中のフッ素濃度は,フッ化物洗口開始に伴い上昇が認められた。また,洗口群の齲蝕の発生は,非洗口群と比較して有意に低い値を示し,57%の抑制を認めた。併せてMSレベルの減少傾向を示した。洗口群におけるMSレベルを用いた齲蝕予測性は,高い鋭敏度を示し,逆に特異度は低い値であった。 フッ化物洗口によるMSレベルの減少傾向の原因を探ることを目的に,フッ化物がミュータンスレンサ球菌の染色体DNAに及ぼす影響を調べるため,染色体DNAの抽出および制限酵素の選択を行った。その結果,HeaIII, HindIIIにおいてアガロースゲルを用いて行った電気泳動にて制限断片が確認された。しかし,フッ化物による影響は観察できず,より詳細な検討を行うために本方法の今後の検討が必要と思われた。
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