研究概要 |
男性のY染色体上には、最近多くのShort Tandem Repeat(STR)領域が報告され、Y-STRは父-男子の鑑定や、異母男性兄弟の父親の決定などに有用な他、STR領域が多数発表されたことから、事件現場に残っていた遺留品と捜査対象の男性との異同識別、父子鑑定などにも応用され、注目を集めている遺伝子である。 今回、DYS19、DYS389 I、DYS389 II、DYS390、DYS391、DYS392そしてDYS393の7種類の領域(ローカス)についてシーケンス分析をおこなった。つまり、PCR増幅後増幅産物を2%アガロースゲルで電気泳動し増幅を確認、DNA量として80〜100ngをサイクルシーケンス反応し、エタノール沈殿で回収した。シーケンスは4μlのホルムアミド溶液に溶かしたものを50%尿素を含む6%PAGに全量注入し、ABI Model 373Aで1300V、40mA、約9時間電気泳動し塩基配列を解析した。 その結果、リピート構造は3つのタイプに分けることが可能であった。つまり、単純なユニットの繰り返し(DYS391)、2種類のユニットの混合した繰り返し(DYS389 I, DYS389 II, DYS390,DYS393)、そしてユニットの前あるいは間に特定配列の挿入があるもの(DYS19,DYS392)であった。以上のことから、単純なユニットの繰り返し構造を示すもの以外は、型判定においてPCRダイレクトシーケンス法によるフラグメント解析が必要であると思われた。 さらに、構造分析をする価値があると判定されたローカスについて教室に保管されている他の方法で親子、兄弟関係が確認されている資料について男性DNAを用いて構造多型を検出したところ、父子関係や兄弟関係の有無に関する検査においてきわめて有効であった。
|