研究概要 |
インプラントサルカス中のヒーリングアバットメントに形成された初期のインプラント関連バイオフィルムを微細形態学的に検索し,アバットメントへのバイオフィルム形成には,初期プラーク構成細菌と称される球菌や線状菌が関与していることを見いだした.バイオフィルムの厚みはインプラントサルカス深部に近づくに従い厚くなり,フィクスチャー埋入後1〜2週間で,インプラントサルカス内に成熟したバイオフィルムが形成されることを解明した. 次に,8本の重度インプラント周囲炎罹患インプラントを用いて,インプラント関連バイオフィルムを組織学的に観察するとともに,バイオフィルム形成細菌種を免疫組織化学的に検索し,バイオフィルム細菌の感染経路がインプラントサルカス以外に、アバットメントスクリュー周囲からの内部漏洩であることを改めて確認した他,Porphyromonas gingivalisをはじめとする歯周病原性細菌に対する抗体には陽性反応がみられず,現状ではこれらの細菌種は成人性歯周炎の進行には関わっているが,インプラント周囲炎には関与していないことを示唆した. また,これまでの報告でインプラント周囲炎との関連が示唆されているP.gingivalisのバイオフィルムを作製し,1)生物学的(ATP)活性,2)薬剤感受性,ならびに3)バイオフィルム形成に関与する遺伝子の3点について検討した.バイオフィルム内のP.gingivalisの増殖速度は浮遊状態のP.gingivalisの1/30万であること,P.gingivalisバイオフィルムがグルコン酸クロルヘキシジンに感受性を示すことを解明した他,polyphosphate kinase(ppk)遺伝子のP.gingivalisホモログの検索よりP.gingivalis ppk遺伝子をクローニングすることに成功し,P.gingivalis ppkとEscherichia coli ppkとの相同性がアミノ酸レベルで35.8%であることを明らかにした.
|