研究概要 |
歯周病原的役割の一端を解明するため黒色色素産生グラム陰性偏性嫌気性桿菌であるPrevotella属菌の溶血毒素に関して検討したところこれら両菌種間における血液平板上での集落の溶血環は幾分P.intermediaが強い傾向が認められたもののほとんど相違は無いと考えられた。そこで歯周病患者において検出頻度が顕著に高いP.intermediaについてその溶血因子を検討した結果、活性は培養上清に有り、菌体の音波処理においてはほとんど活性が認められなかった。本因子は易熱性蛋白で熱処理(100℃,10min)あるいはトリプシン(12000u/ml)処理において溶血活性は完全に失活した。また、キレート剤(40mM EDTA)およびカチオン(100mM Ca、Mg)による影響は認められなかった。部分精製品(DEAE-Sephacel後のCM-Sepharose画分)は4℃放置でその活性が漸次減少した。しかし、各種還元剤(Cystein,Dithiothreitol,Glutationなど)によりある程度差が認められるものの、その活性は回復を示した。溶血活性はpHで差が認められ、溶血活性に影響を及ぼさない(pH6.0-8.0)範囲においてはpH7.5付近で最大値を示した。さらにこの物質はHot-cold型の溶血毒でないことが判明した。しかし、4℃においては活性が認められず活性発現が温度に影響されることが認められた。本活性物質はprevolysin Oと名付けられ論文として発表した(FEMS Immun.Med.Micro.35(1):43-47,2003)。 また、P.intermediaには低分子の溶血活性物質の存在も報告されており申請者らは、これらの分離精製、特性解析も行った。P.intermedia培養上清を濃縮後調整用ゲル濾過カラムP6続いて精製用同P6およびP2に供し、部分精製を行った。本物質は熱安定性でありまたpH6.0〜7.5の範囲において安定した溶血活性を示した。金属イオンの溶血活性に対する影響を調べた結果Fe^<2+>およびEDTAで増強作用が認められ、Zn^<2+>,Al^<3+>,Ca^<2+>,Mg^<2+>およびCu^<2+>に対しては活性の変動は認められなかった。このように、P.intermediaには高分子易熱性蛋白質と低分子耐熱性の2種類の溶血活性物質が存在し、歯周組織において持続的に溶血を引き起こしている可能性が考えられる。
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